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大阪地方裁判所 昭和25年(ヨ)120号 決定

(十八名選定当事者)

申請人 大畑茂

被申請人 戸根無線株式会社

一、保証 無保証

二、主  文

申請人等が被申請会社に対して提起すべき解雇無効確認等に関する本案判決確定に至る迄

被申請会社は申請人及び別紙人名表記載の者をその従業員として取扱い、申請人及び別紙人名表記載の者に対し夫々別紙賃金表記載の金員を昭和二十四年十月九日以降毎月支払わねばならない。

三、理  由

本件申請の当否に関する判断の要旨を掲げる。

(一)、本件労働協約の効力の存否について、

申請人等の所属する全日本電気工業労働組合大阪支部戸根無線分会と被申請会社間の労働協約は昭和二十三年五月二十九日に締結せられ右協約の第二十九条第一項の更新規定により昭和二十四年五月二十九日より更に向う六カ月間更新せられたのであるがその後同年九月二十四日に至り被申請会社から同月末日を以て協約を廃棄する旨の通告があつた。しかし右廃棄の通告は次に述べる理由により協約の効力には何ら消長を及ぼさないものと考える。

即ち労働組合法第十五条第二項本文の規定は本件協約第二項の如く協約の有効期間経過後の新協約成立迄その効力が存続すると豫め規定せられた所謂自働延長の規定がある場合に於ても期間経過後は当事者は一方的に破棄出来る旨を規定したに過ぎず本件の如く自働更新規定によつて有効に更新せられた協約を一方的に破棄出来ぬことは同条第二項但書の規定に明示するところである。

次に協約締結の基礎となつた社会経済事情がその当時豫見しなかつた事由のために激変して当事者に協約を守らせることが無理であると考えられる場合には所謂事情変更の原則の条理により一方的に解約し得ると解すべき余地はあるが、本件協約に於て組合員の採用基本計画移動登用転勤賞罰解雇等人事に関する事項(第四、五条)待遇給与等に関する事項(十条)並に工場閉鎖長期休業、操業短縮、組織機構名義の変更合併分割等(第十八条)については会社は或は組合と協議することを要し、或は会社組合双方の協議決定によることを要する等或程度組合の経営参加的規定が存するのであるが仮に被申請会社がその経営を存続するためには企業の合理化を要し人件費節約のため従業員を解雇することが必須の条件であるとしても右事実を以て直に協約締結当時の社会経済事情が激変したために会社に対し協約を守ることを強いることが無理であると云うことは出来ない。なんとならば被申請会社の人員整理の必要性が客観的に認め得る場合には組合も亦之を忍ばねばならぬのであつて会社がその然る所以を充分納得出来る様説明し具体案に付き協議せんとするに拘らず組合が協議に応じない場合或は協議するも組合が故なく反対して協議決定の出来ない場合には権利の濫用と認めて会社は組合と協議決定することなく有効に組合員を解雇し得るのであるから本件協約を守ることは会社にとつて何ら苛酷と云うことは出来ないからである。

(二)、解雇について会社組合双方の協議決定があつたか否かについて、

被申請会社は昭和二十四年十月五日組合との団体交渉の席上企業合理化のため百二十人乃至百三十人の過剰人員整理の意図を明かにし組合は整理必要性の具体的根拠被整理者に対する保障案等の提示を求め翌六日も続行したところ七日に至り被申請会社は同日午前十時より人員整理を議題とする団体交渉の申入をなし組合の八、九月分の遅配賃金の問題をも議題とし十月十日午前十時より交渉に応ずる旨の囘答に対して同日重ねて時日の遷延は出来ぬとして八日午前九時より交渉する旨且双方の交渉人員を五人に限定する旨回答したところ被申請会社は同月八日に会社の申入の条件が容れられなかつたとして交渉取止方を通告し組合と協議決定することなく同日附を以て申請人等を解雇した。協約第五条第三号によれば会社は会社組合双方協議決定した者以外は解雇出来ない旨規定せられている。右は会社が常に一方的に解雇出来ない趣旨でないことは前記の通りであるが十月七日附組合員全員で交渉したい旨の組合の回答に対しては交渉人員を五人に制限しなければならない理由を具体的に説明しそれが客観的に妥当性があるに拘らず組合が自己の意見に固執して讓らないときにはじめて組合は拒絶権を濫用するものとして会社は単独で解雇し得るものと謂い得る。従つて本件に於ては会社は組合に充分協議するの機会を与えたものとは云い難いから会社組合双方協議決定することなくしてなした昭和二十四年十月八日附の解雇は協約の規範に反するものとして無効といわねばならない。

(三)、協約失効後に解雇があつたか否かについて

本件協約は昭和二十四年十一月二十八日を以て失効したのであるが仮に被申請会社が同年十月八日に申請人等を解雇して以来解雇の意思を継続していたとしても以前の解雇の意思表示を取消し改めて解雇する旨の意思表示のない限り単に協約が失効した事実又はその後に労働基準法第二十条に基く所謂豫告手当を供託した事実を以てそこに新な解雇の意思表示があつたものと考えることは出来ない。協約の有効期間が経過したのみにては以前になした無効の解雇の意思継続しているに過ぎず又その意思表示に基いて豫告手当を供託したに過ぎないと解されるからである。本件に於ては協約失効後に於て、又豫告手当を供託した当時に於て以前の解雇を取消し改めて解雇する意思表示をしたと解し得る特別の事情は存しない。

(四)、申請人等は別紙賃金表記載の賃金により生活する給料生活者であつて他に收入の道なく生活に困窮し本案判決確定を待つことの出来ない事情にある。

以上は当事者双方から提出した疏明に基いて一応認められた事実により判断したのである。

(裁判官 小林定人)

別紙人名表<省略>

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